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病気への「逃げ」

精神科医になって以来、数限りなく、

「病気に逃げている。甘えている」

という言葉を聞いてきました。

本人さん自身がそう言ったり。
ご家族や周囲がそう言ったり。
会社の人が、そう言ったり。

やれば出来るはずなのに、病気に逃げているんだ、と。

実際のところ、病気というものは、

あることを拒否して逃げているのではなく、
あることを実行する能力がない状態です。

体の病気でも、重い病気であればあるほど
なかなか受け入れられないものです。

病気だと告げられて、
ショックを受ける。
「そんなはずはない」と否定したくなる。
怒りや悲しみも感じることでしょう。

ある人は、
「自分にはどこも悪いところはない。
もっと頑張るべきだ」と思っていた。
でも、どこか無理をしていた。

そして、心筋梗塞を起こしてしまった。
会社には、行けない。

またある人は、
「自分はしんどいはずがない。
これしきのことで、しんどいと言っていてはいけない。
頑張らないといけない」と思っていた。
でも、どこか無理をしていた。

そして、気がつくとうつ病になっていた。
会社には、行けない。

さて、心筋梗塞になった人を見て、
「心筋梗塞に、逃げるのはよせ」
と言う人がいるでしょうか。

では、もうひとりのうつ病の人に対しては、
どうでしょう。
「うつ病に、逃げるのはよせ」

結局のところ、うつ病を病気ではなく、
単に性格や人生問題のレベルでとらえてしまうと、
こういう発想になると思います。

確かに、最近問題になっている
「非定型うつ病」「未熟型うつ病」
では、一見逃げや自分勝手な弱さとして
写る側面があります。

どこまでが病気で、どこからが元々の
性格なのか、わからなくなってしまうことは
あります。

でも、「未熟だ」と切って捨てる前に、
もうちょっと観察してみたいなと
思っています。

もともとは、人によく配慮出来る
優しい人だったかも知れません。
配慮して配慮して、ずーっと配慮の
しっ放しで。

我慢に我慢を重ねてきたが、
チリも積もれば山となってしまった。
限界です。
反動が来ることも、あるでしょう。

目の前の現象だけでなく、
そういうことが起こっている背景だとか
経緯だとかも想像して、
人物を立体的に見てゆかないと
いけないなと、思っています。

正直に告白しますが、
私自身、分かった気になって
何度も失敗してきました。

「あ、あれはマズかったな・・・」
犬の散歩中にふと気がついたりします。

でも、理解の精度を高める努力は今後とも
続けてゆきます。

分かれば分かるほど、ラクになります。
気長に取り組んで、行きましょう。
by shin710Y | 2009-11-06 21:27 | こころの健康
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