メンタルクリニックへ行く。
何か、うしろめたい想いがある方もいらっしゃるのでは ないでしょうか。 何で、そんな場所に行くの。 もっと、しっかりしなきゃ。 世間の皆様にも、色々なご意見があろうかと思います。 ビルの片隅で診療している私自身は、こう考えています。 メンタルクリニックにご興味がわかない方は、 その方の考え方を尊重します。 それと同時に、私自身はこの仕事に 誇りを持っています。 後ろ向きなことをしているわけでもなければ、 意味のないことをしているわけでもありません。 ただのビジネスとしてやっているつもりもありません。 お一人お一人の心の健康を増進させるために、 この仕事をしています。 それが、この仕事の目的です。 さて、お陰さまで医師になって20年、開業してもうじき約6年、 精神科医のはしくれとしてそれなりに臨床経験を 積ませていただいてきて、段々とわかってきたことが あります。 このような市街地のメンタルクリニックを訪れるような方々は、 うつ病やその類縁疾患、不安障害を患っている場合が多いのですが、 回復してゆく概ねのプロセスというものがあります。 全ての方に当てはまるわけではありませんが、 簡単にまとめてみます。 ステージ1: 意識的・無意識的に気持ちを抑えて、それなりに過ごせている時期。 この段階では、まだ明らかな破綻はなく、何とか日常が回っています。 ステージ2: 気持ちを抑え切れなくなって、心や体調が破綻した時期。 ここに至って受診され、治療が開始します。 ほとんどの方が、まだ頑張れていたステージ1に戻ることが、 治療の目標だと考えます。 ステージ3: 一進一退の時期。 気をつけていれば頑張れたり、調子のいい時があるのですが、 よし、もう大丈夫かなと思っていると具合が悪くなったり、 予期せぬ出来事に対処し損ねたりして、安定した状態が続きません。 しかし、長い目で見ると少しずつであっても着実に前進が見られます。 時々振り返ってみることが大切です。 ステージ4: 古い自分の殻を破って、新しい自分に一歩前進したレベル。 理性と感情の衝突が起きにくくなり、 「心配はあるけど、まあ何とかなるか」と少し気楽に 考えられるようになります。 「何だか、病気になる前より元気になった気がします」 などと、感想を言われます。 回復とは、以前の頑張っていた自分に戻ることだろうと みなさん想像されるのですが、本当の回復とは、 自分らしさを取り戻すことです。 病気になる前の自分は、どこか無理をしていて 背伸びをしていたのです。 そして、自分らしさを取り戻したほうが、 案外と生産性が上がります。 ここまで来るのが、私の考える治療目標です。 でも、ステージ2や3では何度となく不安になって しまうものです。 自分は、本当によくなるんだろうか? 大丈夫なのかな・・・? そんな時に、道先案内人がいたら安心だと 思いませんか。 そこで、病院や診療所の心療内科や精神科が 皆様のお手伝いをさせていただいているわけです。 当院では、不肖・私がインストラクターを勤めて おります。 不安になりがちな、ステージ3を乗り切るためには 冬から春が来る自然界の動きが参考になります。 今日は4月1日。ここ岡山でも桜が大分咲きました。 春が来たのです。 ここで、今年の2月下旬から3月、そして今日までの 気象を思い起こしてみてください。 2月下旬は、まるで4月のような陽気がさしていました。 当クリニックでも、午後にクーラーをつけた日がありました。 それが、3月になってこの冬初めての雪。 その後も、お彼岸を過ぎてもなかなか温まらない。 しまいかけた暖房器具に再び活躍してもらいました。 いわゆる三寒四温ですが、今年は 四寒三温くらいだったでしょうか。 いつになったら、暖かくなるんだろう? それでも、春は来るわけです。 回復のプロセスを登っていって下さった方々には 本当に感謝している次第です。 時々、一緒に迷子になったこともあったわけですが、 よくぞ諦めずに進んでくださった。 なかなか、こういうプロセスに一人で立ち向かって いくことは大変です。 一人で自立して、問題を解決するという気概も大切ですが、 困った時は人に助けを求めることも大切です。 バランス感覚を磨いてゆきましょう。 一流のスポーツ選手にもコーチがいます。 大会社の経営者だって、メンター(心の師匠)がいます。 彼らは、自分の限界を知っているのです。 そういうわけで・・・ 本日の結論: 「当院では変な呼び込みは一切しておりませんので、 まああまり難しく考えずに、ブラッとお越しになるのも いいかもしれませんよ」 最後は、やっぱりハズしてしまったようです。
by shin710Y
| 2010-04-01 21:47
| クリニックの様子
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