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自己否定を乗り越えて

人の心にはそれぞれ個性がありますが、その基本構造は案外似ています。
そして、人間の中には、プラスの部分とマイナスの部分とがあります。
自分の中のマイナスに向き合うことは大変な作業です。
マイナスの自分とは、たとえば弱気だったり、不安や悲しみ、怒りを持つ自分などです。さらには、投げやりであったり、自己中心的であったり、偽善的な自分です。簡単にいうと、自分の中の嫌な部分です。
まずまず順風満帆な時は、マイナスのことは棚上げしておけます。しかし、人生山あり谷ありです。人によっては、子供の時からずっと逆境だという方もいるでしょう。周囲の状況が厳しい時に、自分の嫌なところがつい顔を覗かせたりします。

今回は、自分を受け入れることが出来ず、長い間苦しんで受診に到った方のことを振り返ってみます。

マイナスを何とかして、なくさないといけない。こんな自分ではいけない。でも、どうしてもマイナスがある。頑張ろうとすればするほど、マイナスが一層勢いを増してくる。受診されるのは、そんな時です。
大なり小なり、どん底へと落ちてゆきます。苦しさは頂点に達します。お薬もしばしば必要となります。
治療する側は、どんな苦しさだろうかと想像し、その方のマイナスは他ならぬ自分の中にもないかと探します。プラスも発見してゆこうとします。

そうこうして一緒に呻吟していると、来談された方が少しずつ自分を受け入れられるようになってきます。視野も広がってきます。いつそうなるかは、患者さんにも治療者側にも、分かりません。必要なだけ時間がかかります。

マイナスを受け入れ出すと、不思議なことに何か平和な感じがしてきます。楽な雰囲気が出てきます。マイナスはなくなっていないのに、自信すら出てきます。それに何だか、人の気持ちも以前よりわかってきます。

そんなプロセスを辿りながら、回復されてゆきます。その道のりを、ご相伴させていただいているわけです。ここまでくれば、病気とのお付き合いも実り多い作業だったとお互い実感出来ます。

私自身、そんな体験が非常に励みになっております。本当にまだまだ未熟者ですが、どうぞよろしくお願い致します。
by shin710Y | 2006-12-22 20:02 | こころの健康
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