「もうちょっと、自分を好きになれるといいんだけどね」
つまらん精神科医が、こんなことを診察中に独り言のようにつぶやいたりします。
自分には、何にもいいところがない。
このように患者さんが主張します。
自分のことが、嫌いなんですね。
冒頭のセリフを聞かされて、「ああ、そうだったんだ。なるほど」と
得心してくれた患者さんを、私が見たことがあっただろうか。
よく考えてみれば、カウンセリングというものは、嫌っている自分を
好きになる取り組みと言えるでしょう。
何度でも、「自分はダメ」という気持ちを感じてゆけば、
いつかは前に踏み出せるようです。「ま、それでもいいか」という風に。
しかし、自分へのダメ出しは一種の放送禁止用語なので、封印されがちです。
「自分はダメ」と表現すると、まずい。
表現せずにおくと、苦しい。
結局、ドカーンと表現されたりして、ますます自己嫌悪に。
診察中には、いろいろな放送禁止用語が飛びかっています。
〇〇分・1本勝負みたいな感じです。
さて、ある方の場合。
自己嫌悪のオーラが立ちのぼり、「この先、どうなるんだろうか?」と
いうような状態でしたが、
3年たって随分変わられました。
「自分が好き」とまでは行かないでも、自己嫌悪は語られなくなりました。
周囲との関係も、随分と良くなっています。
ご本人の努力と、周囲の方々の支えのおかげです。
健康な自分(お日様)のまわりにこびりついていた、
病気の自分(雲や雨)が削げ落ちてきて、
中からお日様の光がポカポカと差してきました。
石の上にも3年ですなあ。もうじき春だなあ。