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「素の自分を取り戻す」

昨日、元サッカー日本代表の中田英寿さんの近況を取材したTV番組を見ました。現役選手を突然引退した後、世界中を旅して回っているとのことです。この半年で、すでに地球を2周半移動した計算になるとか。相変わらずアクティブです。

彼は今年のW杯まで、長きに渡り日本代表の大黒柱として期待を一身に集め、自分の気持ちを押し殺して過ごして来ました。最後の試合の後にグラウンドで大の字になって天を仰いでいた時、自分でも驚くほど色んな感情が沸きあがって来たそうです。
自分をある一定の枠にはめ込んで生きてきた。それが、これで現役生活も終わりだと考えた時、すべてのものが噴出してきたのでしょう。

これまでの枠にとらわれない「素の自分」を取り戻したい。そして世界を広く知って今後自分に何が出来るかを見つけてゆきたい。そのために、世界を旅して回っている。

旅行は当初、1年の予定であったものが、とても1年では足りないそうです。彼にとって十分な時間が必要だということです。「素の自分を」を取り戻すためにも・・・。

私は彼の心境をきいて、心の病でお仕事を休んでいらっしゃる方々のことに不思議と思いが及びました。

例えば、うつ病の方です。

仕事を精一杯忠実にこなして来た。もう頑張れないくらい頑張ったが、それでも自分ではまだまだ頑張りが足りないと思う。何故そんなに頑張るのかといえば、それが性格だといえばそれまでだけど、他にも理由がある。人生の流れの中で、そんな価値観を身につけてきた。

しかし、頭ではもっと頑張ろうと思っているのに、何故か心や体が言うことを聴かない。気力がどうしてもわかない。自分らしからぬ感情が自分を覆い尽くしてしまった。うつ病になってしまった。そして、仕事を休むことになった。

休みを取れば、比較的短期間で気力が充実してくる人もいますが、非常に時間がかかる方もいらっしゃいます。当初の見込みより、随分長くかかってしまうことがあるのです。

それは何故でしょう。まだ、機が熟していないのです。

昨夜のTVを見ていて、中田英寿さんが自分のペースで世界を旅しているのと、患者さんが休養しながらも、もがいているのと、意外な共通点を見つけた気がしました。「素の自分」を取り戻そうとしていること、です。

ある人は、旅を続けています。ある人は、休養を取っています。旅を延々と続けるとか、休養を延々と取り続けるとか、そこだけを見ると、全く正反対ですし、その間それぞれ何も変わっていないように見えます。でも、内面は少しずつ変化しているはずです。

突拍子も無い関連付けかもしれません。
これは、ブログです。つまり、ただの日記です。
ですが、何かのご参考になれば幸いです。

今年1年、たくさんのことを勉強させていただき、誠に有難うございました。
皆様方にとりまして、新年が良いお年でありますように、祈念いたします。
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by shin710Y | 2006-12-26 20:20 | こころの健康

自己否定を乗り越えて

人の心にはそれぞれ個性がありますが、その基本構造は案外似ています。
そして、人間の中には、プラスの部分とマイナスの部分とがあります。
自分の中のマイナスに向き合うことは大変な作業です。
マイナスの自分とは、たとえば弱気だったり、不安や悲しみ、怒りを持つ自分などです。さらには、投げやりであったり、自己中心的であったり、偽善的な自分です。簡単にいうと、自分の中の嫌な部分です。
まずまず順風満帆な時は、マイナスのことは棚上げしておけます。しかし、人生山あり谷ありです。人によっては、子供の時からずっと逆境だという方もいるでしょう。周囲の状況が厳しい時に、自分の嫌なところがつい顔を覗かせたりします。

今回は、自分を受け入れることが出来ず、長い間苦しんで受診に到った方のことを振り返ってみます。

マイナスを何とかして、なくさないといけない。こんな自分ではいけない。でも、どうしてもマイナスがある。頑張ろうとすればするほど、マイナスが一層勢いを増してくる。受診されるのは、そんな時です。
大なり小なり、どん底へと落ちてゆきます。苦しさは頂点に達します。お薬もしばしば必要となります。
治療する側は、どんな苦しさだろうかと想像し、その方のマイナスは他ならぬ自分の中にもないかと探します。プラスも発見してゆこうとします。

そうこうして一緒に呻吟していると、来談された方が少しずつ自分を受け入れられるようになってきます。視野も広がってきます。いつそうなるかは、患者さんにも治療者側にも、分かりません。必要なだけ時間がかかります。

マイナスを受け入れ出すと、不思議なことに何か平和な感じがしてきます。楽な雰囲気が出てきます。マイナスはなくなっていないのに、自信すら出てきます。それに何だか、人の気持ちも以前よりわかってきます。

そんなプロセスを辿りながら、回復されてゆきます。その道のりを、ご相伴させていただいているわけです。ここまでくれば、病気とのお付き合いも実り多い作業だったとお互い実感出来ます。

私自身、そんな体験が非常に励みになっております。本当にまだまだ未熟者ですが、どうぞよろしくお願い致します。
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by shin710Y | 2006-12-22 20:02 | こころの健康

いつも有難うございます

来院される方には、色々と教えていただいております。

日々発見があります。
例えば、こんな話があります。

患者さんの子供の頃のことに話が及んだ時、
「こうやって話をしていると、忘れていたことを思い出すんですね。中学の時グレていたのは、今にして思えばそうやって親の関心を引きたかったんでしょうね」

別の方は、逆に親としての立場から、
「何であれだけ可愛かった子供が、私にあんな暴言を吐くようになったのでしょうか・・・」と。

その方は、診察の終わりに
「私も必死に生きてきたんですよ」と話されました。

必死に生きてきた、というその言葉に感銘を受けました。

グレた中学時代を送っていたという、冒頭でご紹介した患者さんは、その頃も、そして大人になった今も、必死に生きておられます。

みんな、一緒だなと思うのです。
子供とか大人とかいった立場の違いを超えて、みんな一緒なんじゃないでしょうか。

あと、もうお一人。
その方は、本当の自分の一側面を表す言葉として
「孤独」というキーワードを話されました。

人は孤独な存在なのか。
考え出したら、ヘビーな問題です。
孤独さを隠して、必死に生きているのが人間というものなのかもしれません。

もし、みんなそうなら、みんな一緒ですね。
何だ、みんなそうなんだ。
だったら、孤独だけと孤独でない。

不思議ですね。
あなたは、一人ではない。

以上、感動的な(?)フィナーレでした。
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by shin710Y | 2006-12-14 20:33 | クリニックの様子

ジョン・レノンにみる心の成長

ジョン・レノンの命日が近づいています。

オノ・ヨーコと再婚し、ビートルズが解散して間もない頃の彼の作品に、“マザー”という曲があります。「お母さん、行かないで。お父さん、おうちに帰ってきて」という歌です。母に捨てられ、おばに引き取られて育った少年ジョンの悲しみが伝わってきます。

そんな彼は、ヨーコという年の離れた年上女房と再婚したわけです。彼は、恋人でもあり、かつお母さん的な人が欲しかったのかな、と想像します。

とても恋しい女房ではあっても、その後一時別居して過ごしています。勝手な推測ですが、少年が親に反抗して家出をしていた感じです。その間、ヨーコは彼をずっと見守っていた。放蕩三昧の無茶な自分であるにもかかわらず、見守ってくれるヨーコに安心を覚えたのか、再び仲睦ましく過ごしています。その時は、精神的に成熟したのでしょう。いいお父さんになっています。

彼の中には強さと弱さが同居していて、すべてをさらけ出すところが魅力の一つになっているように思います。

人に歴史あり。
以上、岡山の田舎オヤジの徒然日記でした。
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by shin710Y | 2006-12-02 19:34 | 日記