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石の扉と木の扉

ある患者さんが、人間関係でひどく悩んでいた
時のことを例え話にして教えて下さいました。

非常に分かりやすくて、しかも文学的な表現で
感銘を受けました。
ここで、皆様とシェアしたいと思います。

長い間、ある重要人物との関係に悩んでいた。
話したいことが、全く通じなかった。

連絡路があるように見えるのだけれど、
そこに扉があって、扉はびくともしなかった。

扉は石で出来ていて、叩いても跳ね返されるばかり。
カミソリが入る隙間もなく、自分は途方に暮れていた。

本当は、木で出来ていて、隙間もあって、
押せば開くような扉であって欲しかった。

結局のところ、自分が悪いのだと思って、
自分を責めた。

気持ちを話したくなって、再び扉を
叩いてはみたが、やはり石の扉だった。

大分回り道をしているようではあるものの、
お互いの努力によって、そこにある扉は以前より
少しずつ風通しが良くなっているそうです。

こういう関係のあり方を、
私は「良い」とか「悪い」とかは申しません。

いや、修行不足のため本当はチラッと
judge していたりしないわけでも
ありませんが、
あまり意味のないことだと考えるように
なってきました。

それよりも、自分の気持ちや感情に気づくこと、
そしてそれを言葉に出来ることが、とても
素晴らしいと思います。

関係回復のプロセスを、見守りたいと思います。
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by shin710Y | 2009-11-21 17:59 | 診察風景

快挙!

ある難関の試験を、当院の患者さんが突破されました!

直前まで泣き泣き取り組んでいる状態でしたから、
喜びもひとしおです。

おめでとう!

「大丈夫かなと思っていても、
努力を継続しているとある時点から
突然成果が目に見える形になってくるよ」
とアドバイスしておいたのですが、
本当に良かったです。

何故わざわざこのブログに取り上げさせて
いただいたかと申しますと、
長らく低迷していた患者さんだからなのです。

実際のところ、人生を投げていました。

「本当に、良くなるとは思えない」というのが、
実感だったと思います。

私だって、非常に心配していました。

精神科医として、成長する機会を与えていただいて、
本当に有難いことです。
私の方こそ、治してもらった気分です。

勇気と希望をくれて、有難う!
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by shin710Y | 2009-11-20 19:01 | 日記

病気への「逃げ」

精神科医になって以来、数限りなく、

「病気に逃げている。甘えている」

という言葉を聞いてきました。

本人さん自身がそう言ったり。
ご家族や周囲がそう言ったり。
会社の人が、そう言ったり。

やれば出来るはずなのに、病気に逃げているんだ、と。

実際のところ、病気というものは、

あることを拒否して逃げているのではなく、
あることを実行する能力がない状態です。

体の病気でも、重い病気であればあるほど
なかなか受け入れられないものです。

病気だと告げられて、
ショックを受ける。
「そんなはずはない」と否定したくなる。
怒りや悲しみも感じることでしょう。

ある人は、
「自分にはどこも悪いところはない。
もっと頑張るべきだ」と思っていた。
でも、どこか無理をしていた。

そして、心筋梗塞を起こしてしまった。
会社には、行けない。

またある人は、
「自分はしんどいはずがない。
これしきのことで、しんどいと言っていてはいけない。
頑張らないといけない」と思っていた。
でも、どこか無理をしていた。

そして、気がつくとうつ病になっていた。
会社には、行けない。

さて、心筋梗塞になった人を見て、
「心筋梗塞に、逃げるのはよせ」
と言う人がいるでしょうか。

では、もうひとりのうつ病の人に対しては、
どうでしょう。
「うつ病に、逃げるのはよせ」

結局のところ、うつ病を病気ではなく、
単に性格や人生問題のレベルでとらえてしまうと、
こういう発想になると思います。

確かに、最近問題になっている
「非定型うつ病」「未熟型うつ病」
では、一見逃げや自分勝手な弱さとして
写る側面があります。

どこまでが病気で、どこからが元々の
性格なのか、わからなくなってしまうことは
あります。

でも、「未熟だ」と切って捨てる前に、
もうちょっと観察してみたいなと
思っています。

もともとは、人によく配慮出来る
優しい人だったかも知れません。
配慮して配慮して、ずーっと配慮の
しっ放しで。

我慢に我慢を重ねてきたが、
チリも積もれば山となってしまった。
限界です。
反動が来ることも、あるでしょう。

目の前の現象だけでなく、
そういうことが起こっている背景だとか
経緯だとかも想像して、
人物を立体的に見てゆかないと
いけないなと、思っています。

正直に告白しますが、
私自身、分かった気になって
何度も失敗してきました。

「あ、あれはマズかったな・・・」
犬の散歩中にふと気がついたりします。

でも、理解の精度を高める努力は今後とも
続けてゆきます。

分かれば分かるほど、ラクになります。
気長に取り組んで、行きましょう。
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by shin710Y | 2009-11-06 21:27 | こころの健康