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自分は健康なのか、病気なのか

当院では、主にICD-10という、国際疾病分類に基づいて診断を行います。
公な診断書を書く場合、ICD-10に則って書く必要があるためです。
なお、ICD-10とは、世界保健機関(WHO)が作った分類です。

さて、実際に病気かどうかは、診断基準に当てはまるかどうか、
という単純な問題ではないと、考えられます。

理由の一つは、正常な場合でも一時的に病気の診断基準を
満たしてしまうことがあることです。

例えば、突然の別れや不運、人生の過酷な試練に際して、
当分のあいだ悲しみや落ち込み、不眠、食欲の低下をきたすことなどは、
誰にでも起こりうることです。
ごく自然なこととして、しばらく様子を見ていれば
次第に落ち着いてくることもあるでしょう。

しかし、診断チェックリストをみたところ病気に該当するということで、
すぐに治療を開始した場合、余計なお節介になるのかもしれません。
難しいところです。

もう一つの理由は、必ずしも診断基準を満たしていなくても、
治療を開始した方がよい場合もあることです。

例えば、忍耐力が強く、少々のことでは音を上げないタイプの人は、
症状をほとんど自覚していない場合があります。
この際、そのまま放置していると瀬戸際に追い詰められてしまい、
いつか破綻をきたしてしまうことがあるかもしれません。

このように、心の病であるかどうかは、
診断基準に合致しているかどうかだけでは判断できない面があります。

以上をまとめると、二つの問題に集約できます。
①病気でないものを、病気にしてしまっている問題(過剰診断)
②病気が病気として、きちんとみなされていない問題(見落とし)

さらに、健康と病気は連続的なもので、両者の中間にグレーゾーン
(白でも黒でもない、灰色)がある、ということもご理解いただきたいと思います。
東洋医学にある「未病」という考え方が、この灰色部分を表しています。

健康 ⇔ 未病(グレーゾーン) ⇔ 病気

この灰色部分にしても、かなり健康に近い場合もあれば、
病気のほんの一歩手前という場合もあるでしょう。
これらを短時間で正確に見分けることは、なかなか難しいことです。
慎重な判断が必要です。

心の病の診断に関しては、ICD-10のほかに
DSM-5という診断分類があります。
これは「精神疾患の診断と統計マニュアル 第5版」のことで、
アメリカ精神医学会が作った診断分類です。

これは、診断と統計の「マニュアル」だと、はっきり書いてあります。
ここが重要です。

一般的にマニュアルというものは、
物事を整理整頓するうえでとても役に立つものです。

ちなみに、当院でも職員用のマニュアルを
長年かけて手分けして作ってきましたが、
なかなか手間のかかる作業です。

いわんや、DSM-5においておや。

一方、マニュアルもそれ自体で万能ではありません。

マニュアル通りに仕事をしても、
実際の仕事では解決困難なことがたくさんあります。

つまり、マニュアルというものはバイブルではなく、
むしろ土台となる知識にすぎません。

マニュアルは、必要なものであり非常に有難いものではあるが、
それだけで十分なものではない。

こういう点に注意しながら、情報を集め、
病気なのかどうかを見極めていく必要があると
考えています。

参考になさってください。
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by shin710Y | 2015-01-26 18:23 | こころの健康